「坂の途中の家」読了
「坂の途中の家」という本を読みました
先日読んだ「紙の月」に続き、角田光代の著書というだけで選び借りてきた本です
数ページ読んだだけで、主人公が補充裁判員になったことから話が始まることにびっくり
なぜなら私自身3ヵ月程前に裁判員に選ばれ、実際に刑事事件の裁判に関わったからです
作品中の事件は乳幼児の虐待死事件で私が関わったものとは違いますが、裁判や評議の様子はリアルにわかるし、帰宅後もその事件が頭から離れなかったり古い記憶がよみがえってきたりすることも実感としてわかります
何だか他人事とは思えぬ気持ちで読み進めました
主人公の里紗子はもうすぐ3歳になる娘をもつ主婦で、外からは何不自由ない暮らしを送っているように見える
でも実は夫や義理の両親にはモヤモヤしたものを抱えているし、言うことをきかない娘も時に可愛く思えないこともある
地方に住む実家の両親とも疎遠だし、心を許せる友といってもそう頻繁に会えない
そんな里紗子が補充裁判員(裁判員は6名、補充裁判員は2名選ばれる)になり、8ヵ月の娘を水の入った浴槽に落として死なせてしまった母親をめぐる証言にふれるうち、いつしか彼女の境遇に自らを重ねていく
忘れていた過去がよみがえり、あえて目をそらし封印していた思いが溢れ出す里紗子
そういえばと私も思い出したことがある
うちの子どもたちは幼い頃、他所の子と比べ言葉が遅かったが、それは母親の言葉かけが少ないからだと言われたことがある
若く未熟な母親(私)はやっぱり傷ついたし悲しかったっけ。あの時「大丈夫だよ、ちゃんとコミュニケーションとれてるし」なんて言われたらどれ程救われたことか
何気ない言葉や態度が不安で自信のない母親を追いつめていくことがあるんだと思う
裁判を経て里紗子の内面は大きく変わり、もう昔の彼女には戻れないでしょう
これから彼女はどこへ向かうのでしょう
これまた読みごたえのある一冊でした
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